庭の土が育たないと、多くの人は先に改良資材を買いに行きます。しかし同じ「水はけが悪い」でも、土質が粘土だから抜けない場合、地面が平らだから溜まる場合、酸度が合っていない場合の三つがあり、効く資材と効かない資材が違います。このページでは、資材を選ぶ前に入れる診断の順番を五段階に分解して、それぞれの判定目安を出典とともに載せています。穴を掘って水を注ぐ時間、土を握ったときの崩れ方、pHを実際に測る手順、pHと交換酸度の違い、石灰の効き分けまでをこの順でやると、必要な資材が一本に絞れます。1㎡あたりどのくらいの資材を入れるかという量は、花壇の土づくり計算と堆肥のページが既に扱っているため、ここでは繰り返しません。

最初に、庭の状態が当てはまっているかどうかを確認します。植木屋東京が挙げるサインは、土がカチカチでスコップが入らない、雨が降ると水たまりができる、雑草ばかり生えて野菜や花が育たない、葉の色が薄く成長が遅い、の四つです。当てはまる場合は、資材を足す前に下の五段階を順に試してください。診断の目的は、土質を見るか、水が抜ける速さを見るか、酸度を見るかを分けることです。

土壌改良の診断順|五段階の調べ方と判定の目安(出典が公表している値と表現をそのまま記載)
順何を調べるかやり方判定の目安と出典
1水はけ直径30cm・深さ30cmの穴を掘り、水をたっぷり注いで抜けるまでの時間を計る30分以上残るなら水はけがやや悪い、1時間以上なら悪い、2時間以上ならかなり悪い(植木屋東京)
2土質湿らせた土を軽く握ってみて、崩れ方を見る固まって崩れないなら粘土質、サラサラと崩れるなら砂質(植木屋東京)
3酸度(pH)日陰干しした土を2mm目の篩(ふるい)にかけ、土壌10gに蒸留水25mLを加えて30分程度振とうし、得た懸濁液を測るスラリー比は1対2.5。ガラス電極pHメーターは正確だが機器が高価でメンテナンスも必要なため、家庭菜園では試験紙や簡易器具が実用的(JA全農)
4交換酸度土壌に塩化カリウムを加えて抽出した酸性物質(主に交換性アルミニウム)の量を見る別名y1。pH7付近でほぼゼロで、pHが下がるにつれて増加する。作物の酸性障害の指標になり、交換酸度が大きい土壌ではジャガイモそうか病の発病が抑止される(北海道立総合研究機構)
5石灰の種類速効性にするか緩効性にするかを選ぶ速効性は消石灰・生石灰・苦土消石灰・苦土生石灰、緩効性は炭カル・苦土炭カル。粒状より紛状のほうが即効。施用直後は根に障害が出やすいため育苗床土の改良は炭カル(農林水産省)

五段階の順番には理由があります。1と2は土そのものの性質を見て、水が抜けないのか、抜けるのに保たないのかを分けます。3と4は化学的な側面で、酸度が素材として合っているか、pHには表れない酸性物質が残っているかを見ます。5は、そこまでで決めた課題に対してどの資材を選ぶかの分岐です。この順を飛ばして「水はけ改善」と書いてある資材を面の全面に混ぜると、効かないのに 手間だけかかることになります。

水はけの判定で一度試すとよいのが、穴を掘って水を注ぐ方法です。直径30cm・深さ30cmの穴に水をたっぷり入れ、排水にかかる時間を計ります。30分以上残ればやや悪い、1時間以上なら悪い、2時間以上ならかなり悪いという三段の目盛りが示されています。同じページには土を軽く握って崩れ方を見る判定も書いてあり、固まって崩れないのが粘土質、サラサラと崩れるのが砂質です。握って固まる土は保水側に振れた土で、指で押しつぶすと崩れる程度なら排水の余地がある、と読み替えると庭の作業では分かりやすくなります。この二段階で、資材で直す話か、勾配や排水の構造で直す話かの見当が付きます。

酸度を実測する場合、JA全農の営農Q&Aが示す手順が最も具体的です。土を日陰干しにしてから2mm目の篩に通し、その土壌10gに蒸留水25mLを加えて30分程度振とうします。加える水の量が土壌の2.5倍なので、この関係をスラリー比1対2.5と呼びます。得られた懸濁液にガラス電極pHメーターのセンサー部を挿入し、目盛が安定したところを読み取るのですが、この機器は高価で、頻繁にメンテナンスも必要なため、家庭菜園のpH測定にはあまり実用的ではありません。そこで実用になるのが、同じ懸濁液を大まかに測る試験紙や指示薬、あるいは畑の土に直接センサーを差し込む抽出操作不要の簡易測定器具です。種類によって測定方法も測定原理も違うので、製品の取扱説明書に従います。土に直接差し込むだけの器具は、差した位置の水分や接触状態によって値が揺らぐことを前提に、何カ所も測って傾向を見る使い方が安全です。

pHを実測すると、しばしば中性寄りの値が出ます。ここで注意したいのが、pHと交換酸度が別物だという点です。pHは水素イオンの濃度から見る酸度で、測定すれば土が酸性かアルカリ性かが分かります。一方、交換酸度は土壌に塩化カリウムを加えて抽出される酸性物質、主に交換性アルミニウムの量で、別名をy1と呼びます。pH7付近ではほぼゼロで、pHが下がるにつれて増加するという関係が北海道立総合研究機構の資料に示されています。つまりpH6の土とpH5の土では、酸度の差だけでなく、植物の根に触れるアルミニウムの量が大きく違う可能性があります。pHの数字だけ見て石灰を入れればよいと決めると、交換酸度まで見落とすことがあります。酸性障害の指標として交換酸度を使う発想は、家庭の庭ではまず意識されないので、生育が極端に悪い場合の候補として置いておくとよいでしょう。

資材を決める段階で効いてくるのが、石灰の効き分けです。農林水産省の資料は、条件別の石灰資材の選定として、速効性を持つものに消石灰と生石灰、マグネシウムを伴う苦土消石灰と苦土生石灰を挙げています。消石灰や生石灰は塩基性の力が強く即効性ですが、施用直後は根に障害が発生しやすいため、育苗床土などの改良には炭酸カルシウム(炭カル)を使うと書かれています。粒状より紛状のほうが即効になり、マグネシウムとカルシウムを含む苦土炭カルは遅効性で、かつpHを上昇させるため、速効性を狙う場合やもともとpHが高い土では不向きとされています。アルカリに傾きすぎた土を戻す方向の話は、同じ資料が酸性肥料を用いる、石灰の使用を中止する、りん酸質資材を過リン酸石灰にする、といった肥培管理でpHを下げる扱いをしているので、資材を足す以外の手段もあることを覚えておいてください。アジサイの花色は庭の酸度を知る手がかりになります。花ごころの相談記事は、土が酸性なら青、アルカリ性なら赤になりやすく、青い紫陽花の根元に苦土石灰をまいたところ花色がにごったという体験を紹介しています。庭にアジサイがあれば酸度の傾向がなんとなく分かる、という整理のしかたです。

ここで、資材では解決しないケースの分岐を書いておきます。改良資材で変わるものは土そのものの性質で、地面が平らで水が表面に留まる場合、深さ方向に耕盤状の固い層があり抜けない場合、敷地全体が周辺より低くなっている場合は、資材を混ぜる量を増やしても抜けません。判断の順番は、まず土質を改良資材で整える、それで足りなければ勾配をつけて表面水を流すかます(暗渠・透水管)へ預ける、それでも改善しなければ排水工事として土留めや場内排水を検討する、の三段になります。溝幅や暗渠間隔、勾配の数値、砕石の必要量そのものは当サイトでは 暗渠排水の施工手順 と 暗渠排水の砕石量計算 が所持しているので、このページでは繰り返しません。

もう一つ、診断のタイミングに関わる話として、経年による状態変化があります。団粒構造は有機物が結着剤になって粒が集まる構造で、土がカチカチでスコップが入らない、毎年締まって同じ状態に戻るという状態は、団粒が崩れて圧密しているサインとして読めます。植栽後の年数が経つほど土が締まり、初年度は問題なかった場所でも年々生育が悪くなる、という記述が施工業者の資料に見られます。診断は一度やって終わりではなく、春と秋の作業前に握り判定をやり直すのが最短の手入れです。資材を1㎡あたりどの程度入れるかは 花壇・庭土の配合計算 が、堆肥と改良材の量の目安は 堆肥・腐葉土の必要量計算 が、用土別の特性の表は 培養土・用土の成分表示データ が、それぞれ担当しています。花壇を最初に作る手順そのものは 花壇の土づくり にあります。

  • 資材選びに分岐を使う

    粘土質で水はけが悪いなら通気を足す方向、砂質で保水が効かないなら保水を足す方向、酸度が合っていなければ石灰か酸性資材の方向、と診断結果が資材の名前を決めます。施用量の数字は配合計算のページが持っているので、このページは分岐までを持つ役割にしています。

  • 測るのは一度に全部やらない

    穴テストと握り判定は工具不要でその日のうちに終わります。pHは土を乾かして篩う手間があるので、庭仕事の前日に用意しておくと当日に詰められます。

  • 複数の状態が重なる場合

    水はけも酸度も悪い場合は、先に水はけの判定を直します。水が抜けない土では石灰を混ぜても反応が進まず、翌年にやり直すことになるためです。