花壇づくりは、苗を買ってから場所を考えるとつまずきます。草花が育つかどうかを決めるのは苗の種類より前に、そこに日がどれだけ当たるか、水がどこへ抜けるか、そして土の中に庭木の根や塀の基礎がないかです。このページでは、場所を決める前の確認から、庭土の改良、株間の取り方、植え付け時期の決め方までを、段階ごとに止まって確認する点とあわせて整理します。
花壇づくりの手順を調べると、耕して堆肥を混ぜて苗を植える、という流れが最初に出てきます。ところが実際につまずくのは、その前の段階です。日当たりを確かめないまま苗を買う、庭木の根の上を掘って木を弱らせる、水はけの悪い場所に植えて梅雨に根を傷める。どれも花の選び方ではなく、場所と土の判断で起きます。このページは、買い物の前に現地で確かめる項目から始めます。
作業は次の6段階で進みます。大切なのは、各段階に「次へ進む前に確認すること」がある点です。確認を飛ばしても作業そのものは進められますが、進めた分だけ後戻りが大きくなります。
| 段階 | 作業 | 次へ進む前に確認すること |
|---|---|---|
| ① 場所を決める | 花壇を置く位置を決め、日当たりと水の流れを見る | 上に庭木の枝がないか。数年後に枝が広がる余地はあるか |
| ② 輪郭と境界を決める | 形を決めてラインを引き、土留めの位置を出す | 掘る位置に庭木の太い根、塀の基礎、埋設管がないか |
| ③ 土と排水を確かめる | 深さ30〜40cmを掘り返し、石と古い根を取り除く | 掘った底に水が浮いてこないか。粘土層がどこまで続くか |
| ④ 庭土を改良する | 庭土に改良材・堆肥・石灰を混ぜ込む | 石灰と元肥を同時に入れていないか。落ち着かせる期間をどう取るか |
| ⑤ 苗を仮置きして株間を決める | ポットのまま並べて配置と株間を確かめる | 隣の苗と葉が重ならないか。背の高い苗が後ろになっているか |
| ⑥ 植え付けて活着させる | 植え付け、株元へ水をやる | 深植えになっていないか。水が根鉢まで届いているか |
①でいちばん多い失敗は、日当たりを昼に見た一度の印象で決めてしまうことです。花壇にする場所に1日中立って、午前と午後で日がどう動くか、隣家や庭木の影がどこまで来るかを見ます。とくに落葉樹の下は、冬から春先まではよく日が当たり、晩春から秋は木陰になるという性格があり、一日のうちの明るさではなく季節で変わります。
| 場所の条件 | 花壇の置き方 | 向く草花のタイプ | 植える前に確かめること |
|---|---|---|---|
| 庭木の枝張りの下でも日中は日が当たる | 樹冠の外側に輪郭を出す | 日なたを好む草花 | その庭木が今後どれだけ枝を広げるか |
| 落葉樹の下で、冬から春先までは明るい | 木の根元から少し離して前栽にする | 春咲きの球根草花(スイセン・ムスカリなど) | 根元の根が地表近くを横に走っていないか |
| 常緑樹の下や建物の北側で、日中も暗い | 日陰に強い草花だけに絞る | 半日陰を好む草花 | 土が乾きすぎていないか。逆に水が溜まらないか |
| 掘る位置に太い根や塀の基礎がある | 位置をずらすか、浅く掘って盛り土で作る | 浅根性で乾燥に強い草花 | どこまで掘ってよいかを先に決めておく |
庭木の下を花壇にできるかは、日当たりと根の2つで決まります。日当たりは、樹冠の下が一年中暗いとは限りません。落葉樹なら冬から春先まではよく日が当たり、晩春から秋だけ木陰になるため、この明暗の周期に合う草花を選べば木の下でも花壇は成り立ちます。一方で根は、日当たりと違って見えません。海外の園芸情報でも、木の下に植えるときは「根の競合を考え、乾燥に強く浅根性の植物を選ぶ」「成熟した木の根のまわりを深く掘るのは避ける」とされており、日当たりより根のほうが判断を誤りやすいことが分かります。いま測った枝張りから樹冠の広さを出し、剪定でどこまで枝を詰めれば花壇に日が入るかを先に見ておくには樹冠面積計算機が使えます。
②と③では、掘ってよい場所かどうかを先に決めます。輪郭の内側に庭木の太い根、塀や門柱の基礎、立水栓や浄化槽へつながる埋設管がある場合は、そのまま掘り進めずに、位置をずらすか浅く掘って盛り土で花壇を作る形に切り替えます。掘った底に水が浮いてくる、雨の翌日にも水が残っているという場合も、土を足す前に一度止めてください。水が抜けない場所は土の配合を変えても改善せず、植えた草花が梅雨に根腐れします。
③の掘り返しは、スコップで深さ30〜40cmくらいまで全体を掘り返し、石ころやもともと生えていた木や草の根を取り除きます。掘り返して出た土の塊は小さく砕いておくと、次の工程で改良材が混ざりやすくなります。
④の庭土の改良では、庭土をすべて入れ替えるのではなく、既存の庭土と改良した培養土を半分ずつ混ぜる方法が紹介されています。庭土50%・オリジナル培養土50%で、その培養土は赤玉土と腐葉土を6対4で混ぜたもの、という配合例があり、改良材や堆肥、石灰を混ぜ込む深さは20〜30cmくらいで、よくかくはんしながら混ぜ込みます。面積から必要な量を出すには、入れ替える割合と配合、石灰と元肥の量をまとめて出せる花壇の土配合計算機を使うと、買う袋数まで決まります。
ここで迷いやすいのが、石灰と元肥を入れてから植えるまでの期間です。公表されている解説でも、改良材と元肥、石灰を同時にすき込んで「1週間程度」土を落ち着かせるとする説明と、石灰をまいて「2週間ほど」なじませてから植え付けるとする説明があります。これは同じ作業の期間が食い違っているのではなく、何を一緒に混ぜたときの話かが違います。
| 出典 | 示されている期間 | 何を混ぜたときの話か |
|---|---|---|
| サカタのタネ 園芸通信(土づくり) | 改良後、1週間程度は土を落ち着かせ、その後に植物を定植 | 土壌改良材と元肥(油粕・骨粉)、苦土石灰を同時にすき込む手順 |
| 花ごころ(苦土石灰の使い方) | 土と混ぜ合わせ、2週間ほど土になじませてから植物を植え付ける | 苦土石灰をまき、深さ20〜30cmまで耕して土と混ぜる手順 |
| (当サイトの整理) | 迷ったら長いほうの2週間を取る | 前提が違う説明なので、短い期間のほうをそのまま当てはめない |
⑤では、苗をポットから出さずに並べて配置を決めます。株間は草花の種類で決まり、マリーゴールドはフレンチ種20〜25cm間隔・アフリカン種30〜35cm間隔、パンジーとビオラは15〜20cm間隔が目安として示されています。ポットのまま並べると、葉が重なるかどうか、背の高い苗を後ろに置けているかを、植える前に見て直せます。花壇の面積と株間から必要な株数と苗代を出すには花壇の必要株数計算機を使います。
| 草花 | 株間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| マリーゴールド | フレンチ種20〜25cm・アフリカン種30〜35cm | 同じマリーゴールドでも種で株間が違う |
| パンジー・ビオラ | 15〜20cm | 寒地・寒冷地では冬期のマルチングや霜除けが必要 |
⑥の植え付けでは、性質の似た草花を組み合わせることが勧められています。日当たりを好むもの、乾燥に強いものというように、日の当たり方と水やりの量が同じ草花を同じ花壇に入れると、片方だけが弱ることを避けられます。開花期を合わせるのも同じ理由で、花壇の一部だけが咲いて残りが葉だけになる状態を防げます。植え付けの直前に苗へ水をやらないこと、苗は植え付け直前にポットから取り出して根を傷めないことも、同じ解説に示されています。
植え付け後の水やりは株元にたっぷりと与えます。プランターや鉢に植える場合は、用土の体積の3倍の水量を目安に、鉢底から出るくらいまで与えるという説明があります。花壇では、表面が乾いたら次を与えるのが目安です。植えたばかりの苗は水圧で折れることがあるため、花や葉にかけないように株元へ与えてください。以降の水やりの量と頻度は水やりの基本で扱っています。
植え付け時期は、全国共通の月で決められるものではありません。同じ草花でも地域で時期が変わり、たとえば北海道ではジニアやマリーゴールド、サルビアのような夏から秋の花を、5月末から苗で早々と植え込みます。夏になってから植えるとすぐ冬が来るためで、本州では秋まき一年草として扱う草花が北海道では春から活躍する、という反転も起きます。また北海道では6月にリラ冷えと呼ばれる寒さが戻ることがあり、植えた直後の苗が傷む原因になります。寒地・寒冷地では、パンジーやビオラに冬期のマルチングや霜除けが必要という指摘もあります。自分の地域の時期は、遅霜の時期と、植える苗の状態(根鉢が回っていないか、花が咲きすぎていないか)を合わせて決めてください。
花壇づくりで後戻りが大きいのは土の工程です。場所と日当たりを確かめ、掘る位置に根や基礎がないことを確認し、庭土の改良と石灰の期間を守り、ポットのまま並べて株間を決めてから植え付ける。この順番を守ると、植えた後にやり直す作業は、水やりと枯れた花を摘み取る手入れだけになります。