培養土の袋に書かれた「pH 6.0」「有機物 65%」という数字は、正確な測定値ではなく、法律で認められた幅の中の表示です。土壌改良資材品質表示基準(昭和59年告示第198号)は、表示項目ごとに誤差の許容範囲を定めています。たとえば有機物の含有率は「表示値のマイナス10パーセント」まで許されるため、袋が65%と書いていれば実測は58.5%以上という読み方になります。このページでは、その7項目の許容範囲と単位、種類別に表示が定められている用途の文言、赤玉土の粒径等級、用土別の通気性・保水性・保肥性・pH、営農ガイドが示す野菜別の適正pHとEC別施肥量の係数を、出典の表記そのままに一覧化しました。配合や必要量の計算に使うときは、帯の下限側で見たほうが失敗しません。
品質表示基準は「土壌改良資材」に分類される資材の表示方法を定めた告示で、袋の裏面の項目表の根拠になっています。基準は表示項目ごとに単位と誤差の許容範囲を定め、施用方法については「土壌の単位面積又は単位重量当たりの標準的な施用量をキログラム単位、トン単位、リットル単位又は立方メートル単位で記載すること」と書き方を指定しています(VA菌根菌資材はグラム単位)。つまり袋の施用量の行は、㎡あたりキログラムでもリットルでも書かれていれば基準どおりであり、単位が違うから誤記とは限りません。下表の許容範囲はすべて「表示値に対する幅」で書かれています。
| 表示項目 | 単位 | 誤差の許容範囲 |
|---|---|---|
| 有機物の含有率 | パーセント(%) | 表示値のマイナス10パーセント |
| 有機物中の腐植酸の含有率 | % | 表示値のプラスマイナス15パーセント |
| 水分の含有率 | % | 表示値のプラス10パーセント |
| 陽イオン交換容量 | 100グラム当たりミリグラム当量(meq/100g) | 表示値のマイナス10パーセント |
| 単位容積質量 | 1リットル当たりキログラム(kg/l) | 表示値のプラス10パーセント |
| 膨潤力 | 2グラム当たりミリリットル(ml/2g) | 表示値のマイナス10パーセント |
| 共生率 | % | 表示値のマイナス15パーセント |
この表から読み取れるのは、幅の向きが項目によって逆だという点です。有機物・陽イオン交換容量・膨潤力・共生率は「マイナス側」だけが見られるため、表示値より多く入っていてはいけないわけではありませんが、表示を下回るのは許容幅まで許されます。水分と単位容積質量は「プラス側」が許容で、袋が軽量と書いた商品が実測より重い方向に振れる余地があることを意味します。腐植酸だけは「プラスマイナス15パーセント」の双方向です。単位容積質量は1リットルあたりのキログラム(kg/l)で書かれる重さの表示で、資材名から体積や袋数を求める計算では、この幅を織り込んだうえで余裕率を上乗せするのが安全です。共生率を記載する場合には、試験に用いた植物名をかつこ書きで併記する、と基準に書かれているため、数字だけが一人歩きしない設計になっています。
袋の「用途」や「主たる効果」という行は、販売者の自由な文言ではなく、資材の種類ごとに表示区分が決まっています。特徴的なのは泥炭で、有機物中の腐植酸の含有率が70パーセントを境に表示できる文言が変わります。70パーセント未満なら「土壌の膨軟化」「土壌の保水性の改善」、70パーセント以上なら「土壌の保肥力の改善」です。同じ「ピートモス(泥炭)」という名前でも、腐植酸率によって効き目の説明が違う品になるということです。保肥力と保水性を取り違えると、狙った改良效果が得られません。
| 資材の種類 | 表示される用途(主たる効果) | 区分の条件 |
|---|---|---|
| 泥炭 | 土壌の膨軟化・土壌の保水性の改善 | 有機物中の腐植酸の含有率が70パーセント未満 |
| 泥炭 | 土壌の保肥力の改善 | 有機物中の腐植酸の含有率が70パーセント以上 |
| バークたい肥 | 土壌の膨軟化 | 一義 |
| 腐植酸質資材 | 土壌の保肥力の改善 | 一義 |
| 木炭 | 土壌の透水性の改善 | 一義 |
| けいそう土焼成粒 | 土壌の透水性の改善 | 一義 |
| バーミキュライト | 土壌の透水性の改善 | 一義 |
| ゼオライト | 土壌の保肥力の改善 | 一義 |
| パーライト | 土壌の保水性の改善 | 一義 |
| ベントナイト | 水田の漏水防止 | 一義 |
| VA菌根菌資材 | 土壌のりん酸供給能の改善 | 一義 |
| ポリエチレンイミン系資材 | 土壌の団粒形成促進 | 一義 |
| ポリビニルアルコール系資材 | 土壌の団粒形成促進 | 一義 |
赤玉土の呼び名には法的な粒径基準がありません。園芸媒体を解説するHORTIは、粒径を5等級に表にまとめつつ「ただし、明確な粒の基準がないため、メーカーや販売者ごとに粒の大きさの基準が異なり、呼び名も違うことがあります」と但し書きを置いています。下表のmm値はその販売者が置いた目安であり、A社の小粒とB社の小粒が同じ大きさとは限らないということです。水はけと水もちは粒の大きさで逆方向に振れるため、粒の号数ではなく孔径の帯で商品を選べば、呼び名の違いに振り回されません。なお同じ解説は赤玉土の酸度を「pH5〜6の弱酸性の土」、中性を「pH6.5〜7」としており、用土別のpH表と方向が合っています。
| 等級 | 粒径(mm) | 挙げられている用途 | 水はけ | 水もち |
|---|---|---|---|---|
| 大粒 | 12〜20 | 鉢底のゴロ土・鉢底石の代用 | ◎ | △ |
| 中粒 | 6〜12 | 植え付け主要の土・挿し木 | ○ | ○ |
| 小粒 | 3〜6 | 植え付けの主体・細かい鉢向け | ○ | ○ |
| 極小粒 | 2〜3 | 湿地を好む植物 | △ | ◎ |
| 細粒 | 1〜2 | 細かい用土を好む植物 | △ | ◎ |
用土を混ぜる判断では「通気性・保水性・保肥性のどれに寄与するか」が先に決まります。種苗店の園芸基礎を公開するアタリヤ農園は、補助用土ごとの特性とpHを一覧にしています。表中の5.0-6.0のような値はpHの帯で、基準となる中性の範囲は6.5〜7です。ピートモス(泥炭)の3.5-4.5、木炭・くん炭の8.0-9.0、パーライトの8.0-8.5といった幅が混在しており、これらの資材は少量でも全体の酸度に効きます。一方で野菜の多くは中性よりわずかに酸性側を好むため、酸度の違う資材を上げ底のように重ねると、想定と異なるpHになります。配合比と必要量は 花壇の土づくりの配合計算 で、培養土を袋で買う場合の枚数は 培養土の必要量計算 でそれぞれ出せます。
| 用土 | 通気性 | 保水性 | 保肥性 | pH |
|---|---|---|---|---|
| 黒土(黒ぼく土) | △ | ◎ | ◎ | 5.0-6.0 |
| 赤玉土 | ◎ | ◎ | ◎ | 5.0-6.0 |
| 荒木田土(田土) | △ | ◎ | ◎ | 5.5-6.5 |
| 鹿沼土 | ◎ | ◎ | ○ | 4.0-5.0 |
| 山砂(真砂土) | △ | ◎ | ◎ | 5.0-6.0 |
| 川砂(桐生砂) | ◎ | △ | △ | 6.0-7.0 |
| 水苔 | ◎ | ◎ | ◎ | 4.5-5.0 |
| 腐葉土 | ◎ | ◎ | ◎ | 6.0-7.0 |
| ピートモス | ◎ | ◎ | ◎ | 3.5-4.5 |
| 木炭・くん炭 | ◎ | ◎ | ◎ | 8.0-9.0 |
| 堆肥 | ◎ | ◎ | ◎ | 6.0-7.0 |
| パーライト | ◎ | ○ | △ | 8.0-8.5 |
| バーミキュライト | ○ | ◎ | ◎ | 6.5-7.0 |
pHと並んで袋や土壌診断書に現れるのがEC(電気伝導度)です。ECは土の中に溶けた塩の量、つまり残っている肥料の濃度を見る指標で、JAあつぎの営農通信は測定値の帯に応じて施肥量の係数を示しています。施肥前のECが0.3以下なら基準の施肥量で構わず、0.4〜0.7で2/3、0.8〜1.2で1/2、1.3〜1.5で1/3、1.6以上は無施用という並べ方です。値が高すぎる状態については「ECの値が高いと肥料焼けを起こし、根が枯れてしまい」と記載されています。市販の培養土はすでに肥料を含有していることが多いので、袋にECが書かれていれば上表の帯に当てはめて追肥の量を決められます。施肥量の基準そのものや成分量から製品量への換算は、別のデータページ 施肥基準の読み方 に扱わせていただきました。診断を外部に依頼する場合、結果は約1カ月ほど期間を要すると同じ解説にあります。
| 施肥前のEC(dS/m) | 施肥量の係数 | 判断 |
|---|---|---|
| 0.3以下 | 基準どおり | 施肥量を変えない |
| 0.4〜0.7 | 2/3 | 基準の3分の2に落とす |
| 0.8〜1.2 | 1/2 | 基準の半分 |
| 1.3〜1.5 | 1/3 | 基準の3分の1 |
| 1.6以上 | 無施用 | 肥料を与えない |
野菜側の適正pHは、営農ガイドが作物を 品目ごとに帯で示しています。実文は「作物が育つ上で適当とされるpHは、通常5.5〜7.0の値で、多くの作物はpH6.0〜6.5の弱酸性土壌でよく育ちます」です。ジャガイモやサツマイモのように5.0〜6.0を挙げる品目がある一方、ホウレンソウやキャベツは6.0〜7.0とやや広い帯になっています。この差は、石灰で酸度を一律に上げる前に品目を確認する必要があることを示しています。資材の酸度は上の用土表、野菜の狙いは下の表で読み合わせます。堆肥や腐葉土を花壇全体に入れる場合の量は 堆肥・腐葉土の必要量計算 から求められます。
| 適正pHの帯 | 挙げられている作物 |
|---|---|
| 6.0〜7.0 | ホウレンソウ・アスパラガス・タマネギ・ネギ・キャベツ・ハクサイ・トウモロコシ・ショウガ |
| 6.0〜6.5 | ニンジン・カブ・カボチャ・キュウリ・ゴボウ・小松菜・サトイモ・ダイコン・ブロッコリー・ニンニク・トマト・ナス・ピーマン |
| 5.0〜6.0 | ジャガイモ・サツマイモ |
| 通常5.5〜7.0 | 作物が育つ上で適当とされる幅全体 |
- 数字は点ではなく帯
有機物の含有率は表示値のマイナス10パーセントまで許容されます。65%表示なら実測の下限は58.5%です。配合比を厳密に設計したい場合は、帯の下限側で計算し、資材の重さの幅は 資材の比重データ一覧 と合わせて見てください。
- 施用方法の単位は4通り
基準は施用量をキログラム、トン、リットル、立方メートルのいずれかで書くことを求めています。㎡あたりのg表示しかない袋と、L表記の袋を比べる場合は、単位をそろえてから比較します。
- 資材ごとの効き方の癖
保水性を表示した泥炭は過度に乾燥すると効果の発現が遅れます。バークたい肥は多量に施すと乾燥しやすくかん水が必要になります。木炭は層を作っても効果が出ず、混和が前提です。バーミキュライトとパーライトは軽いので流出し、覆土が求められます。
- 呼び名の粒径はあてにしない
赤玉土の「小粒」に法的な基準はなく、メーカーごとに粒径も呼び名も違います。孔径のmm帯で商品を選ぶと、メーカーが変わっても同じ排水性に戻せます。
袋の表示を必要量の計算に落とす手順は、次の3つです。まず用途の行を見て、その資材が保水性・保肥力・透水性のどれを狙う品か確定させます。次に含有率や単位容積質量を許容幅の下限側で取り、帯の下端でも狙いの効果が出るか確認します。最後に単位をそろえて㎡またはLの必要量にし、余裕率を上乗せします。数値の帯はあくまで出典が公表した範囲の転記であり、圃場や鉢の実測に代わるものではありません。pHやECの数字が動けば、同じ施肥量でも結果が変わる前提で読んでください。