培養土は袋に写真と用途が書いてあるので、どれを選んでも同じように見えます。ところが筆頭原料を並べてみると、観葉植物用はヤシガラ、花と野菜用はたい肥、多肉植物用は軽石砂で、保水と排水の振れ幅が最初から決まっています。このページでは、製品間の違いを選べること、買った後に効いてくる保存の話、そして使い回せるかどうかの分岐を、実在する公表値で並べました。品質表示の項目と誤差の考え方、用土ごとの特性帯、ECの数値で施肥量を変える考え方は 培養土・用土の成分表示データ が既に所持しているので、ここでは繰り返しません。必要な容量や袋数を出すのは計算側の仕事です。
専用土の違いは、配合の筆頭原料に表れます。植物マガジンが三つの専用培養土を並べた比較では、観葉植物用はヤシガラを筆頭に鹿沼土、赤玉土、パーライト、バーミキュライトなどを挙げ、製品値のpHは6.0±0.5、ECは1.0mS/cm以下としています。花・野菜用はパークたい肥を筆頭にピートモス、鹿沼土、粒土、パーライト、ゼオライト、ネオトリマーなどが加わり、pH6.5±0.5、EC1.0mS/cm以下。多肉植物用は軽石砂を筆頭に赤玉土、ピートモス、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、貝化石などが並び、pH6.3±0.5、EC1.0mS/cm以下です。三つともECの上限は同じで、違っているのは筆頭原料とpHの位置です。軽石砂が多い多肉用は保水性がかなり低く、たい肥が多い花・野菜用は保水と保肥に振れます。
| 専用土 | 筆頭原料 | その他の配合原料 | 表示pH | 表示EC |
|---|---|---|---|---|
| 観葉植物用 | ヤシガラ | 鹿沼土・赤玉土・パーライト・バーミキュライトなど | 6.0±0.5 | 1.0mS/cm以下 |
| 花・野菜用 | パークたい肥 | ピートモス・鹿沼土・粒土・パーライト・ゼオライト・ネオトリマーなど | 6.5±0.5 | 1.0mS/cm以下 |
| 多肉植物用 | 軽石砂 | 赤玉土・ピートモス・バーミキュライト・パーライト・ゼオライト・貝化石など | 6.3±0.5 | 1.0mS/cm以下 |
室内で観葉植物を置く場合、筆頭原料がヤシガラであることは水持ちの抑制と結びつきます。観葉用土は一般的な園芸用土より肥料成分が控えめに設計されていることが多いのですが、これは室内で加湿とカビを避ける方向に振れた設計です。選ぶときは「どの植物を置く場所で育てるか」を先に決めてから袋を比較すると、筆頭原料の並びが理由を持って読めます。用土ごとの通気性・保水性・保肥性・pHの帯は先に挙げた成分表示データの表が持っているので、このページでは製品間の差だけを取り扱います。
二つ目は、価格の単位の話です。通販の実勢は袋単位で表示されるため、大容量が本当に安いか一眼では分かりません。サカタのタネの公式ネットショップで培養土の価格を1Lに割ると、下表のようになります。税込で、8,000円(税込)以上の購入で送料が当社負担になる条件が付きます(北海道・沖縄および島しょ部は除く)。
| 購入単位 | 表示価格 | 合計L | 1Lあたり(当サイト換算) |
|---|---|---|---|
| 20L 1袋 | 2,680円(税込) | 20L | 134円/L |
| 20L 2袋セット | 4,380円(税込) | 40L | 109.5円/L |
| 20L 6袋セット | 12,000円(税込) | 120L | 100円/L |
| 24L 1袋 | 1,980円(税込) | 24L | 82.5円/L |
| 目安として示された値 | 2,000円前後(14L=標準プランター1つ分) | 14L | 約143円/L |
同じ店の中でも、1袋あたりでは2,680円でも、6袋にすると1Lあたりは134円から100円へ下がります。最も安い並びは24Lの1,980円で82.5円/Lでした。一方、標準プランター1つ分が14Lで2,000円前後という目安と並べると、実勢の帯は82.5円から143円/Lに収まり、連続した範囲になります。庭や花壇で使う量を一度に買う場合は、この1Lあたり単価で比較した方が損得が早く決まります。必要なL数や袋数の算出は 培養土の必要量計算 が、袋のサイズ一覧とLとkgの換算是 資材の袋容量と購入単位データ が担当しています。土の重さから運搬手段を考える場合は 資材の比重データ を参照してください。
三つ目は、保存の話です。花ごころの相談欄で、「培養土や肥料に消費期限はあるのか」という質問に対して、どちらも有効期限はないと答えられています。袋に書かれているのは製造年月日や袋詰めした年月で、期限ではありません。食品は腐り、農薬は成分が分解して効き目が落ちるので賞味期限や有効期限が存在しますが、培養土と肥料はそこが違う、という整理です。肥料成分はほとんど変化しないとされています。ただし開封したものは別で、袋の封をしっかりと閉じて保管する必要があります。未開封でも雨と直射日光の当たらない、できれば風通しのいい涼しい場所が最適です。培養土の袋をよく見ると小さな穴が開いていることがありますが、これは堆肥の発酵で出る水分と熱を逃がすための穴です。雨に当てるとこの穴から水が逆に戻り、土がかなり水を含んで扱いにくくなり、ベタつきやコケ化の原因になります。直射日光は熱がこもって水蒸気でムンムンになります。白いカビが生えたという声もありますが、これは土中の菌なので心配はいらず、袋から出して軽く日光に当てて混ぜれば使えます。
四つ目が、使い回しの分岐です。サカタのタネの園芸通信は、古い土のリサイクルを二段階に分けています。1回使った土なら混ぜて終わりの簡単2step、何度も使った土や連作した土は手間をかけるしっかり8stepです。分量はどちらも20Lの土を基準にしているのが読み取りやすいところで、2stepは土づくり培養土またはスーパーミックスAを4〜6L、ミネラル補給のパワフルシリカを100〜300g、粒状肥料を約60g入れて混ぜ合わせます。8stepは45Lの家庭用ゴミ袋に土を入れ、菌が活発になるためのえさとしてバイテクバイオエースを約60g、粉末油かすまたは米ぬかを加え、水で希釈した有機液肥をジョーロで入れて水分を合わせます。雨の当たらない日当たりのよいベランダに置いて2〜3週間おき、時々袋を裏返しながら発酵を進め、最後に土をシートに移してパワフルシリカを200〜600g混ぜて仕上げます。
| 土の状態 | 選ぶ手順 | 20L基準の分量 | 終わるまで |
|---|---|---|---|
| 1回使った土・病害虫や連作の問題が無い | 簡単2step | 土づくり培養土またはスーパーミックスA 4〜6L、パワフルシリカ100〜300g、粒状肥料約60g | 混ぜてすぐ使える |
| 何度も使った土・連作した土 | しっかり8step | バイテクバイオエース約60g、粉末油かすまたは米ぬか、水で希釈した有機液肥、45Lの家庭用ゴミ袋で準備、仕上げにパワフルシリカ200〜600g | 雨の当たらない日当たりのよいベランダで2〜3週間置き、時々裏返す |
ふるいの使い分けも手順に含まれます。古い土を再生するためには粗目、中目、細目の三種類のふるいを準備し、手順でバケツに落ちた土を中目のふるいにかけます。再生に使うのは中目で、5mm四方の網目に1回かけるだけでよいとされています。分段ごとに分かれた土は扱いが違い、1段目と2段に残ったものは捨て、落下した分も使わない、2段目のごろ土は鉢底石に回す、という取舍です。JA全農の営農Q&Aは、プランターの土を使い回す手順として四つを挙げています。真夏の晴天時に新聞紙の上に薄く広げて1週間程度日光消毒する、腐葉土またはバーク堆肥を土1Lあたりコップ軽く一杯程度加えてよく混ぜる、排水溝から水が滴るまで散水して1〜2日置いて水を切る、苦土石灰と緩効性化成肥料を土1Lあたり各5g程度散布してよく混ぜる、という順です。1Lあたりで書かれているのがこの頁の要点であり、庭土1㎡あたりの施用量とは前提が違います。流失や乾燥で減った分を戻す話なので、花壇や庭の土の量に直して使わないでください。1㎡あたりの量は 花壇・庭土の配合計算 側が扱っています。
太陽熱で消毒する場合は、季節で待ち期間が変わります。湿らせた土を袋に入れて縛り、日当たりのよいコンクリートの上に置くと、夏なら2週間〜、冬なら2〜3カ月ほどかかります。熱が均等に伝わるように時々袋を裏返すのが要点で、地温が60℃になると病原菌の多くが死滅するとされています。消毒した土には仕上げの配合を入れます。腐葉土を古土の2〜3割、赤玉土を古土の1〜2割、緩効性肥料を加えるという並びです。東商の園芸特集は、日光消毒が気温20度以上のときに有効であること、ふるいの目が約10mmであること、水を溜めて害虫を退治する方法としてビニール袋に土と水を入れて口を縛ることを挙げています。同じ資料は輪作も勧めていて、春にナス(ナス科)を植えたら秋はタマネギ(ユリ科)、春にキュウリ(ウリ科)なら秋はホウレンソウ(アカザ科)が例として示され、ナスの後にジャガイモ(同じナス科)は悪例とされています。容器の土は水やりや雨でカルシウムとマグネシウムが流れて酸性化するため、連作でなくとも状態は落ちていきます。再生は回数で決まるのではなく、連作したか、病害が残っているか、保水と排水の機能が失われているかで判断してください。
種をまくときの肥料は、培養土の選び方に直接効きます。元肥が入った専用培養土を使うなら、追加で混ぜる必要はありません。混ぜるなら種をまく1週間ほど前にしておくと、まいた時には濃度が落ち着いています。菜園や花壇では基準量、トレーやバット、プランターでは基準量の半量にします。大粒タイプの肥料や速効性の化成肥料を使うと、種に近づいたところで濃度が高くなり、根毛が溶けて枯れる原因になります。一般的な培養土に種をまいた場合、本葉が出て外からの養分を根が吸収し始めるころに肥料成分が濃すぎて根焼けを起こすことがあります。発芽するまでの種は自分の養分で育つため、この時期に肥料が濃いと同じ理屈で障害になります。無肥料の種まき用土を使い、発芽して本葉が出たタイミングで薄い液肥を与える流れが無難です。液肥も本葉が伸び始めてから与える運用になります。元肥と追肥の一般的な考え方は 肥料の基礎知識 に、花壇の土を最初に作る手順は 花壇の土づくり にまとめてあります。
- 買う前に決める二つ
置く場所と植物の種類で筆頭原料が決まり、一度に使う量で1Lあたり単価の得が決まります。20Lを1袋だけ買うと134円/L、6袋で100円/L、24L袋なら82.5円/Lという差は、庭一面をやるか鉢をいくつか足すかで意味が変わります。
- 保管で品質が落ちる原因
有効期限が無い代わりに、雨による逆浸水と直射日光での蒸れが効きます。袋の微孔は発酵の水分と熱を逃がすための穴で、水を通す方向にも開いています。封を閉じて風通しの良い涼しい場所に置くのが正解です。
- 古い土を捨てない判断
1回使った土と連作した土で手順が変わります。混ぜて終わりの2stepか、45L袋で2〜3週間置く8stepか、ふるいの分段をどう捨てるかまで決まっているので、庭の規模に応じて選べます。