庭の配置で後から効いてくるのは、本数よりも置き場所です。決め手は二本あって、一つは成長しきった後の枝張りが隣の木や壁に届くか、もう一つは施設や通路を塞がないか。この二つは公的な資料に実数で書かれています。このページではその数値を、出典の単位ごとそのまま表にしました。何を植えるかの選定は庭木の選び方が、規格の実寸の表は庭木の標準規格データが持ってきます。

先に結論を言うと、間隔は植えた日の大きさではなく、成長しきった姿の枝張りと樹高から逆算します。国土交通省関東地方整備局の街路樹管理マニュアルは、成長後の樹冠の被覆率であるキャノピー率を目安として植栽間隔を設定すると定め、樹形が横に広がる樹種と大径木になる樹種は当初から十分な間隔を確保すると書き、道路施設からも将来の成長を見込み適切な離隔を確保するとしています。この三つが配置の型で、以下に自治体の数値をそのまま転記しました。

ただし注意が一つあります。このマニュアルが示すのは、キャノピー率から算定した結果としての数値の表で、設定樹高に掛ける係数の表ではありません。次の表の右端は本站が間隔を設定樹高で割って足した検算の列で、この比は一定しないことが分かります。したがってこのページは式を作らず、樹種ごとの行として掲げるだけにしました。

関東地方整備局がキャノピー率から算定した植栽間隔(端数切上)
樹種設定樹高(m)植栽間隔(m)間隔÷設定樹高(本站算出)
イチョウ15110.733
プラタナス15171.133
ケヤキ20241.200
ユリノキ20221.100
カツラ20221.100
サクラ10202.000
クロガネモチ10111.100
ヤナギ8121.500
エンジュ8101.250
トウカエデ891.125
ヤマモモ891.125
シラカシ15171.133
ヒメコブシ15171.133
マテバシイ561.200
ハナミズキ561.200

比は下端で0.733、上端で2.000。イチョウやプラタナスのように幅の取れる木は樹高に対して狭い間隔で済む反面、サクラは設定樹高の二倍まで間隔を取ると読めます。このばらつきは、落葉か常緑かや枝張りの広がりを見る選び方の話にそのままつながります。マニュアルは端数切上とした上で、掲げた数値以上の間隔を目安とすると定めています。

同じマニュアルは、間隔を詰め過ぎた区間の扱いも書いています。樹高10mのケヤキの区間を例に、植栽間隔が12m以下の過密な区間は、点検や診断の結果を活用して健全度の低い方を伐採して撤去するといった間伐が有効となると定めています。植えた後に取り返しがつかないのは、この過密の方です。

根の範囲も同じ考え方です。国土技術政策総合研究所の倒伏対策の手引き第二版を引用する形で、樹木の生育に必要な根系範囲の目安を、胸高直径の18倍相当を半径とする幹芯からの円形の範囲と定めています。次の表は本站が18を掛けて検算した列で、出典の参考表の値と全行一致しました。枝張りの円が地上部なら、こちらは地下部の同じ中心からの広がりです。

根系の半径の目安(胸高直径の18倍・本站検算)
胸高直径(cm)半径(cm)半径(m)本站検算
101801.810×18=180
203603.620×18=360
305405.430×18=540
407207.240×18=720
509009.050×18=900
60108010.860×18=1080
70126012.670×18=1260
80144014.480×18=1440
90162016.290×18=1620
100180018.0100×18=1800
110198019.8110×18=1980
120216021.6120×18=2160

庭の場合はこの半径がそのまま使えるわけではなく、物置や塀、配管との取り合いで決まります。それでも目安になるのは、地上の枝張りと同じ中心から根が広がるという図です。枝張りの直径から面積を読む計算は樹冠投影面積の計算が、間隔からの本数は植栽の間隔と本数の計算が持ってきます。

離隔の数値が最もはっきり出てくるのが道路の基準です。名古屋市道路空間の緑化基準は、植樹帯のうち次に掲げる部分には高木を植栽しないと定め、植樹帯の端部から1m以内、信号柱の設置位置から5m、街路灯の設置位置から3m以内、横断歩道橋や地下道、エレベーター棟、地下鉄または地下街の昇降口から3m以内、電柱、電柱支線・アンカー、道路標識から3m以内、道路機能上または構造上支障となる部分、片側2車線以上の道路で通学路である横断歩道の上流15m以内を挙げています。これは道路敷地の基準であり、私有庭の義務ではありません。ただ、電柱や昇降口との距離の考え方は、庭の入口や車庫の前の木でも同じ問題として当てはまります。

名古屋市 道路空間の緑化基準が高木を植栽しないとする部分
対象距離原文の事項級
植樹帯の端部1m以内①植樹帯端部から1メートル以内の部分A
信号柱・街路灯5m・3m以内②信号柱の設置位置から5メートル、街路灯の設置位置から3メートル以内の部分A
横断歩道橋・地下道・エレベーター棟・昇降口3m以内③横断歩道橋(地下道・エレベーター棟を含む)、地下鉄または地下街の昇降口から3メートル以内の部分A
電柱・電柱支線・アンカー・道路標識3m以内④電柱、電柱支線・アンカー、道路標識から3メートル以内の部分A
その他距離の定めなし⑤その他道路機能上または構造上支障となる部分A
通学路である横断歩道(片側2車線以上)上流15m以内⑥片側2車線以上の道路における通学路である横断歩道上流15メートル以内の部分A

同じ基準は、並木の高木の植栽間隔は10mを標準とし、自然樹形を生かして樹冠が大きく取れる場所では12mを標準とし、樹種と路線の状況に応じて最適な間隔に広げられると定めています。公的な緑化基準の並木の間隔が十メートル台という桁になる理由も、上の間隔の表と同じ、成長後の広がりを見込むという考え方です。なお交差点、横断歩道、自転車横断帯、乗り入れ施設などの付近では見通しを確保する植栽にしなければならないと書かれています。

位置の決め方には順番があります。香川県の土木施工のマニュアルは、位置出しの方法を高木から中木の順に、想定される植栽位置に木杭等を打ち込み、これらを主要な眺めの地点から見て、植栽後、生長後の姿を想定し、配列美の法則を踏まえながら補正していく方法と定め、低木は決定した高木中木に合わせて位置を決めるとしています。前の木を決めてから下の段を合わせる、という順です。このマニュアルは、平面図が個々の植付け位置を示さないため、現地の状況に合わせて位置を決める必要があるとも書いています。

  • 第一段|見せ場から決める

    主要な眺めの地点、つまり玄関や窓、庭に出て目線の向く場所から見て、木杭を打った位置がどう見えるかを確認します。数値の前にこの手順が置かれている点がポイントです。

  • 第二段|高木から中木の順

    上の段を決めてから、その足元に中木を合わせます。逆順にすると高木の枝張りの下に入り込まれて中木が育ちません。

  • 第三段|低木は最後に合わせる

    低木は決定した高木中木に合わせて位置を決める、と香川県のマニュアルは定めています。段の構成は後から寄せる形になります。

中心からの離れの考え方については、鎌倉市の緑化基準が単独木の新植の面積を、枝張りを直径とした円の面積の投影面積とすると定めています。直径ではなく半径の分だけ中心から離れる、という読み方は、上の根系の目安と同じ形です。面積そのものの式と計算は、その専業のページに譲るのでここでは組みません。

建物との取り合いは、公的資料の離隔に代わる実務上の数値として、設計事務所の解説に幅があります。癒樹工房の解説では、中高木以上の木は大きくなることを見越して壁から2mほど離して植えるとしています。低木などあまり大きくならないものでも壁から少なくとも30cmは離すとし、庇のある場所では庇で雨がかからず土が乾き気味になるため庇の出から30cmとするとしています。さらに目隠しを作る場合は隠したい部分を確実に覆えるように、隣り合う樹木の枝先が5cmほど重なるように植えると書き、幹の間は高木2m以上、中木1m以上、低木0.5m以上取るとしています。

アルファテックのブログは、本数の目安を3本以上かつ奇数とするとしています。級Cの一社の方針で、5と7という例えを引く書き方でした。このように、離れと本数は資料によって対象が違うため数値の桁が揃いません。壁からの離れは中高木を対象に書く解説と、外壁際の低木を対象に書く記述で桁が違い、本数を論じる記述はまた別の対象です。対象が違う数値を足して引き直して中央値を作ることはしません。伝える側としては、級Bの設計事務所の数値と級Cの業者の方針を分けて置き、自分の庭の段に当てはまる方だけを使います。

図面に起こす段階は、書き方が変わります。stageforgreenの植栽図の描き方の例では、基本計画では樹木名を記入せず、基本設計と実施設計では樹木名の記号を記入すると書き分け、実施設計段階は数量表と特記事項を記載した図面としていて、基本設計段階の植栽計画図と実施設計段階の植栽図では書き方が異なるとまとめています。記号は円の中にカタカナで入れる、同樹種は規格の大きい順にA、B、Cと区別する、といった図面での樹木の表現方法を挙げる民間の設計マニュアルもあります。公的な資料の評価の表でも、凡例として適・やや不適・不適の三段階を記号で示書き方が使われており、凡例は読み手のための必須の要素です。

近隣の境界との距離は、越境した枝の扱いの理屈にもなります。民法233条により隣地の竹木は枝の切り詰めを請求できるため、境界の内側に植えても成長後の枝張りが越境すると後で問題になります。名工建設の解説も、植えた時の大きさではなく成長した後の大きさで考え、枝が屋根や外壁に触れたり隣の敷地に越境したりしないよう、成長後の樹高と枝張りを調べたうえで建物や境界から距離を取って植えることが大切だとしています。このページの表の数値は、その距離を決めるための材料です。配置で面積や方眼の読み方が要る場合は図面から庭の面積を読むで確認できます。

まとめると、置き場所は成長後の枝張りの半径と根系の半径、施設と建物からの離れ、段の順番の三つで決まります。数値は上の表の自治体の値を基準に、建物側は級Bの解説の幅を伝聞として使うのが、調べた範囲での一番まともな型のようです。何を植えるかが決まっていない場合は、先に選び方のページの環境のしきい値を確認してください。