庭木は、植えた日の姿で選ぶと必ず後で困ります。決め手になるのは、その木が年にどれくらい伸びて、何年後に窓の高さまで来るかという伸びの速さと到達する大きさです。このページでは国と自治体の資料に実数として書かれていた成長の前提値と式、植える場所の環境のしきい値、苗木の品質判定の取り決めを、そのまま表にしました。どこに置くかの話は植栽の配置設計が持ってきます。

先に結論を言うと、選び方は三つの軸です。第一に、どこに・何のために植えるか。第二に、一年中緑の常緑樹にするか、季節を楽しむ落葉樹にするか。第三に、手入れの手間と、日当たりや土の深さといった植える場所の環境です。この三つは業者の解説でも同じ順で書かれていますが、数値まで出ていることは少ない。そこでこのページは、各軸に公的資料の実数をつなげる作り方にしました。

成長速度について、調べた範囲では、年に何cmと実数で書いた資料はごく少数でした。出典として名前が挙がるのは多摩市の街路樹整備方針の一つだけで、それも育成の測定値ではなく、管理計画を計算するために市が置いた仮定値です。だから下の表では、値そのものと、それが前提値であることを分けて書いています。

成長の前提値と本站の検算(多摩市の管理計画の仮定)
項目値口径・出典級
幹周の成長の仮定年に3cm多摩市 街路樹整備方針 改訂版が、現存する街路樹の幹周は年に3cmずつ成長したと仮定して管理計画を建てた前提条件A
10年後の幹周+30cm年に3cmを10年分掛けた値=本站算出本站算出
30年後の幹周+90cm年に3cmを30年分掛けた値=本站算出。更新の節目として別の資料が置く幹周90cmと同じ帯になる本站算出
落葉高木と常緑高木の実態2:1同じ方針が、計画の仮定は落葉高木だけだが実態はこの比と記述した値A

上の表で10年後と30年後の二行は本站算出で、掛け算の方向は年数に前提値を掛ける側です。年数を割って求める式ではありません。幹が太る速さの目安なので、樹高がどれくらい伸びるかの感じは次節の式で判断してください。

樹高の伸びを式で置いているのが、国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所の街路樹のマネジメントに関する研究です。対象樹種の成長予測式という表で、上限値に収束する型と、直線で増える型の二通りが混在しています。下の表は式を原文どおり写したもので、係数の意味や年数の取り方は別の章に書かれています。

成長予測式(土木研究所 表-13 の逐字転記・樹高はm、幹周はcm)
樹種成長予測式(樹高:m)成長予測式(幹周:cm)出典欄
プラタナスY = 0.2260 (t) + 5.7053Y = 4.4123 (t) - 18.1803国
アオダモY = 12 - 12 *0.9550573^ (t)Y = 60 - 60 *0.977270331^ (t)道
オオバボダイジュY = 20 - 20 * 0.968323786^ (t)Y = 100 - 100 * 0.984034443^ (t)道
ナナカマドY = 15 - 15 * 0.968323786^ (t)Y = 75 - 75 * 0.984034443^ (t)道
ハシドイY = 12 - 12 *0.9550573^ (t)Y = 60 - 60 *0.977270331^ (t)道
イチョウY = 30 - 30 * 0.987207031^ (t)Y = 150 - 150 * 0.993582926^ (t)道

出典欄の「国」「道」は、同じ報告書が傾きの比較で名を挙げている二つの研究機関の頭字です。原文の略字のまま写したので、展開した機関名はこの表にありません。この表について、ほかに二つ披露しておきます。まず収束型の式は、tをゼロにすると値がゼロにならず、最初の枝から上限値までの幅として効きます。上限値は本文中に、アオダモとハシドイは幹周60cm、ナナカマドは75cmまでが上限値だと書かれています。次に、この表に注記がないので、tが植栽後年数なのか観察年なのかを本站が勝手に定義して、年数を逆算した値は載せていません。式を解いて何年目を求める表を作ることと、庭木を選ぶための目安は別物だからです。データは北海道の街路樹を元にしたものなので、暖地の庭にそのまま当てはめないでください。

伸びる速さの式より実務で効くのが、管理の節目の設定です。同じ研究は、剪定を始める目安、支柱を外す時期、樹高を下げる切り戻し、更新の時期を数値で決めており、その理由まで書いています。下に並べます。

管理の節目(級Aの設定値と、設定した理由の原文)
節目設定値設定の理由級
剪定開始樹高5m到達時(植栽3〜7年後)成長予測式を元に算出した年間生長量と更新時期の目安A
支柱撤去剪定開始時同じ設定の中で支柱撤去を剪定開始時に揃えているA
樹高を下げる剪定樹高12mになった時に樹高9mへ切り戻す切り戻す高さは、高所作業車の作業幅(アウトリガーの張り出し幅)が一車線で収まる規格から設定したA
更新幹周90cmになった時成長予測式から幹周90cmに至るまでの期間を試算して設定したA
試算の期間植栽100年後まで式元データとした樹種の樹齢をみると最大階級が110年以上で、ほとんどは109年までだったことを踏まえて置いた期間A

この表から庭に引き直すと、剪定を始めた時期に支柱を外す、という順番が公的な設定として存在します。放置して切り戻しが必要になると高所作業車の規格まで絡むので、購入時にどこまで伸びる木かを確認する意味は小さくありません。

次に、植える場所の環境側です。庭木は土の深さと根の広がり方で向く向きが別れます。関東地方整備局の街路樹管理マニュアルは、新しい植栽の基盤として確保する土の深さ、吸収根の分布範囲、それを包含する土壌改良の範囲を数値で示しています。国土交通省の都市公園の樹木点検診断指針の参考資料は、枝が園外にはみ出すと道路の建築限界を侵す問題を書いており、車道側と歩道側で必要な高さが違います。千葉市の街路樹のあり方は、交差点まわりの見通しと低木の高さを規定しています。

環境としきい値(公的資料の実数・単位つき転記)
項目数値出典級庭での読み替え
有効土層厚概ね0.9m関東地方整備局 街路樹管理マニュアルAこの深さの土がない場所では大きな木は向かない
細根(吸収根)の分布根株より1.2m程度の範囲同上A吸収根の多くはこの範囲と説明されている
土壌改良の範囲横断・縦断方向とも2.0m同上A分布範囲を包含する幅で改良する取り決め
建築限界(車道側)4.5m国土交通省 都市公園の樹木点検診断指針 参考資料A枝下がこの高さを割ると支障になるという記述
建築限界(歩道側)2.5m同上A車道側と同じ括弧内で示された歩道側の値
交差点部及び巻込み終わり10m以内は高木を植えない千葉市 街路樹のあり方A自動車運転者等の見通しを確保するのが理由
低木の管理高さ60cm未満同上A剪定等の維持管理でこの高さ以下に保つ
植樹帯幅員(中木)最低0.7m以上を確保できる場合関東地方整備局 同上A幅員が足りなければ実施しないという例示
植樹帯幅員(高木)1.0m以上を確保できる場合同上A植栽時の種類分けの下限

注意するのは、これらが道路敷地や公園の基準だという点です。私有庭で守る義務はありません。ただ、電線や歩道に枝が伸びる問題は庭でも同じ形でのぼってくるので、境界際や窓の高さに木を持っていくときの判断材料にはなります。なお、電線が近い場所の剪定は、枝を切る前に電線の管理者へ相談して安全上の確認を済ませる手順が業者側からも出ています。一律の安全距離を示していない、と明示している資料もあるので、このページでは距離を作らず手順だけ書きます。

失敗として後から効いてくるのが、果実と葉の処理です。千葉市は、雌株の植栽により果実が落下し、歩道等の汚れや悪臭で生活環境に支障をきたしていると書いており、果実の落下が苦情になる樹種については雄木への植替えや樹種の変更で被害の低減に努めると規定しています。名前の挙がるのはヤマモモやイチョウなどです。同じ資料は、落葉が排水施設の詰まりを起こし、台風時には強風による落葉と大雨が重なって道路が冠水するケースまで認めています。庭の雨樋や側溝で同じことが起きる前提で選べば、落葉樹の扱いの判断が変わります。

  • 千葉市が使用を限定している分類

    整枝が難しいもの(ナンキンハゼ、アオギリ、マテバシイ、スダジイなど)、根上りに特に注意が必要なもの(メタセコイアなど)、虫害の著しいもの(ツバキ)、見通しや視認性を妨げるもの(カイヅカイブキ、キンモクセイ)。花木は剪定と花芽形成の時期の関係で花付きが悪くなる種があり、ハクモクレンは毎年の弱剪定と概ね3年に1回の基本剪定と書かれています。備考の短句だけを拾ったもので、この資料の樹種表の数値列は抽出で列が崩れたため使っていません。

  • 空間不足の失敗として書かれていること

    狭い道路空間に大径木化する樹種を植栽したため、落ち葉、日陰、越境で住民の生活に支障が出たこと、無理な剪定を繰り返した結果が課題として挙げられています。住宅団地で高木と中低木の混植が生長して見通しが遮られた例も同じ資料にあり、庭でも同じ失敗の形になります。

苗木の品質は、株立の木だと本数と幹周の読み方が変わります。公共用緑化樹木の規格を整理した資料では、幹が二本以上の樹木はおのおのの周長の総和の70%をもって幹周とし、二本立は一本が所要の樹高に達していれば他はその七〇%以上に達していること、三本立以上は指定株立数の過半数が所要の樹高に達し、他はその七〇%以上に達していることと定められています。三本立の実例では、各幹の周長を足して0.7を掛けた20.3cmを、規格の幹周は20cmとみなすと示されています。株立ちの木を見積もるときは、この読み方を通した見積書と、実寸の規格表を分けて確認してください。

落葉か常緑かの判断は、目隠しをいつ使いたいかで分かれます。エンズホームの解説は、常緑樹と落葉樹の違いを八項目の一覧表にまとめています。代表例や冬の姿まで並んだ表なので、下に転記します。同じ資料は、夏に庭で過ごすときの視線だけ気になる、掃き出し窓を開ける季節だけ隠れていればいい、という使い方であれば、落葉樹の目隠しでも十分に役目を果たすと説明しており、一年中隠す必要があるのか、葉のある季節だけでいいのかを先に決めておくことを勧めています。

常緑樹と落葉樹の八項目(級Bの一覧表を転記)
項目常緑樹落葉樹
葉の寿命数年で順に交代1年で一斉に落ちる
冬の姿緑のまま枝だけになる
葉の質厚く硬い薄く広い
落ち葉の量年中少しずつ秋に集中
日差し年中さえぎる夏遮り冬通す
目隠し向き◎ 一年中△ 冬は不向き
四季の変化少なめ大きい
代表例シラカシ・キンモクセイヤマボウシ・モミジ

上の表は機能の差であって、手入れの軽重ではありません。常緑樹でも落ち葉がゼロになるわけではなく、風通しの少ない場所では常緑樹の落ち葉は腐りにくく残る、と同じ資料は書いています。もう一つの落とし穴は、常緑樹は成長が早くこまめな剪定が必要になりやすいことで、常緑を選べば楽という訳ではない点を複数の業者の解説が指摘しています。同じサイトの別の稿には、南側の窓辺に落葉樹を植えて夏の日よけと冬の採光を両立させる考え方、成長後の大きさや基礎・配管・雨樋との距離といった家のそばに植えるときの注意点がまとめられています。

樹種ごとの成長の書き方と、最終的にどの位の大きさまで来るかは、庭木図鑑 植木ペディアの樹種ページのプロフィール欄に幅で書かれています。下に資料のまま並べます。この資料には成長を早いから遅いまで五段階で索引した記事もありますが、年に何cmという実数は無いので、実数が必要なら上の公的資料の式と前提値を使う形になります。

樹種別の成長の書き方と樹高のレンジ(級Bの実寸表記)
樹種成長高さ用途
アオダモやや遅い5m〜15mシンボルツリー・雑木の庭・公園
シラカシ早い10〜20m垣根・街路樹・公園樹
シマトネリコ早い5〜20mシンボルツリー・鉢植え
ヤマボウシやや早い3〜15mシンボルツリー・街路樹・公園樹
ハイノキ遅い3〜4mシンボルツリー
ヤブツバキ遅い5〜15m花木・垣根・茶花
ナツツバキやや早い8〜15m花木・シンボルツリー・公園・茶花
モクレン普通3〜6m公園・街路樹・シンボルツリー
サカキやや早い3〜12m垣根・寺社
コハウチワカエデやや遅い10〜15m公園・雑木の庭・洋風庭園・切花
イロハモミジ早い5m〜15m和風庭園・公園・盆栽

寿命の長さで選ぶなら、伸びの遅い木はそれだけ節目まで長く使えます。LIXILのエクステリアの記事では、アオダモの材がバットやラケットの太さになるまで約70年かかると言われるほど成長が遅く、維持管理が比較的ラクな樹だとされています。これは級Bの一資料の記述で、寿命の保証ではなく目安です。上の管理の節目の表にあるように、公的な試算は100年を比較期間に置いており、庭木の手入れは世代をまたぐ前提で設計しないと間に合いません。

  • 本数と株間の計算はこのページに載せていません

    何本植えるか、株間をいくつにすると何本になるかは庭木の本数を数える計算の持ち分です。ここでは選び方の判断材料だけ置きます。

  • 枝張りの面積換算と植え付けの手順

    成長後の枝張りから樹冠の面積を出す式は樹冠面積の計算に任せました。季節と植え付けの手順は庭木の植え付け手順が持っています。

  • 規格の実寸と費用

    樹高・幹周・枝張の規格値や鉢径の実寸cmは一覧にまとめてあります。それが庭木の標準規格データのページです。植栽工事の費用と剪定の手間賃の帯は費用系のページが持っているので、このページには置きません。