都道府県の施肥基準を開くと、最初は戸惑います。書かれているのは「窒素15kg/10a」のような成分量であって、買ってきた肥料の袋の重さではありません。単位も10a(アール)で、庭や畑の㎡とは違います。さらに目標収量の区分ごとに表が分かれ、元肥と追肥に分けて書かれ、同じ作物でも都道府県で数値が違います。このページは、47都道府県の施肥基準を読むときに必要になる前提と換算を、1枚にまとめたものです。

農林水産省は「化学肥料や堆肥などの施肥は作物に栄養を供給するために不可欠ですが、過剰な施肥はコスト面でデメリットが大きいだけでなく、環境に悪影響を及ぼすことがあります」としたうえで、適正な施肥のために3つの資料を使い分けることを求めています。まず都道府県の施肥基準に則して施肥し、定期的に土壌分析を行ってその結果を土壌診断基準値と照らし合わせ、肥料成分が過剰に蓄積している場合には減肥基準を参考に施肥量を見直す、という手順です。3つは代替ではなく、順番に使うものです。

施肥基準・土壌診断基準値・減肥基準の役割分担
資料何が分かるかいつ使うか
施肥基準作物ごとに必要な施肥の時期と量の目安作付け前の施肥設計
土壌診断基準値土壌分析の結果から見た、そのほ場の状態定期的な土壌分析の判定
減肥基準成分が過剰に蓄積したほ場で、収量・品質に影響のない範囲で施肥量を調節する目安成分が余っているときの施肥量の見直し

施肥基準が「成分量」で書かれているのは、肥料の種類が変わるたびに数値を書き換えなくて済むようにするためです。窒素を10g/㎡とりたいとき、化成肥料8-8-8なら125g/㎡、尿素(窒素46%)なら約22g/㎡、硫酸アンモニウム(窒素21%)なら約48g/㎡と、必要な製品の重さは含有率で2倍以上変わります。基準が成分量で書かれていれば、どの肥料を買っても同じ基準から出発できます。逆に言えば、基準の数値をそのまま「まく肥料の重さ」として読むと、肥料の種類によって過剰にも不足にもなります。

成分量から製品量への換算(目標量 ÷ 含有率 × 100)
成分目標の成分量使う肥料含有率必要な製品量
窒素10g/㎡化成肥料 8-8-88%125g/㎡
窒素10g/㎡尿素46%約22g/㎡
窒素10g/㎡硫酸アンモニウム21%約48g/㎡
りん酸8g/㎡過リン酸石灰17.5%約46g/㎡
加里8g/㎡硫酸加里50%16g/㎡
加里8g/㎡塩化加里60%約13g/㎡

単位の直し方も押さえてください。施肥基準の多くは10a(アール)あたりで書かれています。1aは100㎡、10aは1,000㎡です。したがって「窒素15kg/10a」は、1,000㎡あたり15kg、つまり1㎡あたり15gになります。10aあたりの数値を1,000で割れば㎡あたりになり、逆に㎡あたりの数値を1,000倍すれば10aあたりです。1反(10a)・1町(100a)で書かれた資料もあるため、最初に単位を確認してください。

施肥基準を読む手順
手順すること
1農林水産省「都道府県施肥基準等」から自分の都道府県の資料を探す
2作物名で引く(施肥基準は作物ごとの表になっている)
3目標収量の区分を確認する(同じ作物でも収量目標ごとに施肥量が変わる)
4成分量(窒素・りん酸・加里)を読む。単位が10aあたりかを確かめる
510aあたりの数値を1,000で割って1㎡あたりに直す
6成分量を含有率で割って製品量に換算する
7元肥と追肥の配分を確認する(合計ではなく分けて書かれている)
8土壌分析の結果があれば土壌診断基準値と照らし、必要なら減肥基準で調整する

減肥基準は「肥料を何kg減らすか」ではなく、たいてい「成分が余っているときに施肥量をどの範囲で減らしてよいか」という形で示されています。土壌に成分が蓄積しているほど、次作でまく量を減らせるという考え方です。ただし減肥基準が未策定だったり、一部の作物に限られていたりする都道府県もあります。その場合は近隣の都道府県の基準を参考にできることがありますが、気候も土壌も違うため、普及指導員など地域の施肥指導者に相談してから決めてください。

  • 基準の数値は「成分量」

    窒素15kg/10aは肥料15kgではありません。製品量に直すには含有率で割ります。化成肥料8-8-8なら約1.9倍、尿素なら約2.2分の1です。

  • 単位は10a(1,000㎡)

    ㎡あたりに直すには1,000で割ります。庭や小さな畑で使うときは必ず直してください。1aは100㎡、1反は10a、1町は100aです。

  • 目標収量の区分ごとに違う

    同じ作物でも、目標とする収量によって施肥量が変わります。自分のほ場の実力に近い区分を選ばないと、過剰または不足になります。

  • 元肥と追肥は分けて書かれている

    表の数値が作付け時の元肥だけを指していることがあります。作付け前の施肥設計に追肥の分まで含めると、年間で見て過剰になります。

  • 都道府県ごとに違う

    気候・土壌・作型が違うため、施肥基準は都道府県ごとに策定されています。隣の県の数値をそのまま使わず、自分の県の資料を優先してください。

  • 有機質肥料は重量で比較できない

    菜種油粕の窒素は約5.3%、魚粉は約7%で、尿素(46%)の10分の1程度しか含まれていません。同じ成分量をとるには重量が10倍近く必要です。

この手順の5と6を計算するのが肥料成分の計算機です。目標とする窒素・りん酸・加里の量(g/㎡)を入れると、化成肥料や単肥ごとの必要量と、化成肥料を使ったときの成分の過不足が出ます。芝生の年間施肥量を肥料の種類から知りたいときは芝生の肥料計算機を、液肥の薄め方を知りたいときは液肥希釈計算機をお使いください。

施肥基準は、施肥の量と時期だけでなく、施肥に関する基本知識やより効率的に施肥するための技術も含んでいます。数値だけを抜き出して使うより、前書きと注記まで読むほうが結果として近道です。数値の前提(目標収量・土質・作型)が注記に書かれていることが多く、そこを外すと数値だけでは判断を誤ります。