生垣は、植えた年には形になりません。1年目は根を張らせるだけで刈らず、2年目に枝数を増やし、3年目に芯を止めて初めて天端が揃います。この年次の順序を飛ばして植えた年に形を作ろうとすると、根が張る前に葉を減らして生長が止まり、そのあとの数年が崩れた状態からの立て直しになります。ここでは、これから生垣を植える人が最初に決める樹種と株間から、仕上げまでの年次別の手順、そして崩れてしまった生垣を何年かけて戻すのかまでを、表にして整理します。
生垣の仕立て方は、樹種を選んだ時点でほとんど決まります。刈り込み機で面を揃える角刈りに耐える樹種と、刈り込むと形が崩れて自然樹形で目隠しにする樹種があり、この2つでは株間も年間の剪定回数も違います。角刈りにする樹種は芽吹きが強く、切った位置から新梢が出るため密な面を作れます。自然樹形にする樹種は1本ずつの樹形で見せるため、株間を広く取って枝が重ならないようにします。まず下の表で、植えたい樹種がどちらのタイプかを確認してください。
| 樹種 | 刈り込む形 | 仕上がり高さの目安 | 株間の目安 | 目隠しになるまでの年数 | 年間の剪定回数と時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| マサキ | 角刈り(刈り込み) | 120〜180cm | 30cm | 3〜4年 | 年2回(6月と9〜10月) |
| カナメモチ | 角刈り(刈り込み) | 150〜250cm | 30cm | 3〜4年 | 年2回(5〜6月と9〜10月) |
| シラカシ | 角刈り(刈り込み) | 180〜300cm | 50cm | 4〜6年 | 年2回(5〜6月と9〜10月) |
| マキ | 角刈り(刈り込み) | 120〜200cm | 50cm | 5〜7年 | 年1回(6〜7月) |
| ドウダンツツジ | 玉散らし/自然樹形 | 100〜150cm | 50cm | 3〜4年 | 年1回(花後の5〜6月) |
| カイヅカイブキ(コニファー) | 自然樹形(刈り込まない) | 150〜250cm | 60cm | 4〜6年 | 年1回(6〜7月) |
| キンモクセイ | 自然樹形(刈り込まない) | 180〜250cm | 100cm | 5〜7年 | 年1回(花後の10〜11月) |
この表の株間は、密に仕上げるかゆっくり仕上げるかで選ぶ3つの値(30cm・50cm・100cm)と、低木を自然樹形で植えるときの60cmの範囲に収めています。30cmは植えた年のうちから面が繋がりやすく、密な生垣を早く作れますが本数が多くなり苗木代と植え付けの手間が増えます。50cmは標準で、仕上がりに3〜5年かかりますが本数と密度のバランスが取れます。100cmはキンモクセイのように大きく育つ樹種を自然樹形で並べるときの値で、ゆっくり仕上げる前提です。表の「目隠しになるまでの年数」は、苗木の規格(植えるときの樹高)と生長速度から当サイトが整理した目安で、気候と水やりの条件で前後します。植えるときの樹高が高いほど年数は短くなります。必要な本数は生垣苗木計算機で長さと株間から出せます。
株間は感覚で決めるものではありません。次の3ステップの順で決めると、樹種・仕上がり高さ・苗木の規格の3つが矛盾しない値になります。順序を逆にして苗木を先に買うと、仕上がり高さに対して株間が広すぎたり狭すぎたりして、あとから本数を増やすことになります。
- 仕上がり高さの目標を決める
何のために生垣を植えるのかを先に決めます。道路からの目線を遮るのが目的なら、仕上がり高さは1.4m以上が欲しいところです。立って外を見る人の目線は地面から1.4〜1.5mにあるため、それより低いと隙間から中が見えます。境界を示すだけなら60〜100cmで足り、防犯や強風よけが目的なら1.8m以上になります。この目標高さが決まらないと、刈り込む形も株間も決まりません。
- 樹種の生長速度で刈り込む形を選ぶ
生長が早い樹種は刈り込みに耐え、密な面を早く作れます。マサキやカナメモチは年2回の刈り込みで3〜4年で目隠しになりますが、刈らないとすぐ形が崩れます。マキやカイヅカイブキは生長がおだやかで年1回の手入れで済むものの、仕上がりまでに5〜7年かかり、古い枝まで刈り込むと芽吹かないことがあります。手入れの回数を減らしたいのか、早く目隠しにしたいのかで、この選択は逆になります。
- 苗木の規格から株間を確定する
植えるときの苗木の樹高と、仕上がり高さの差で株間を決めます。苗木の樹高が仕上がり高さの半分以下なら、面が繋がるまで株間を狭く取る必要があります。樹高1m前後の苗木で仕上がり1.8mを目指すなら30〜50cm、樹高1.5m以上の苗木なら50cmでも面が早く繋がります。正方形に並べるか千鳥(正三角形)にずらして並べるかで、同じ株間でも密度が約15%変わるため、配置の差は植栽間隔計算機で確認してください。
植える長さがまだ決まっていない場合は、境界のうち生垣にする辺の長さを先に測ります。敷地の外周から生垣にする辺だけを拾うには庭周長計算機が使えます。長さと株間が決まれば本数が出ますが、枯れや生育不良の補植用に1割程度の予備苗を一緒に買うのが普通です。予備苗を含めた本数と苗木代を分けた植え付け費用は植栽費用計算機で出せます。
| 年次 | 芯(主幹)の扱い | 先端の刈り | 側面の刈り | 時期 | やってはいけないこと |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 切らずに伸ばす | 刈らない | 刈らない | 剪定はしない。植え付け後の水やりを優先 | 植えた年に形を作ろうとすること。根が張る前に葉を減らすと生長が止まる |
| 2年目 | 伸ばしたまま | 新梢の先を軽く止める | 下広がりに軽く整える程度 | 新芽が出揃った6〜7月 | 葉のない古い木質部まで深く刈り込むこと |
| 3年目 | 目標高さに達したら芯を止める | 目標の高さより2〜3cm上で水平に刈る | 下が広く上が狭い台形に刈る | 生長が盛んな5〜6月 | 芯を止める前に側面を強く刈ること |
| 仕上げ以降 | 止めたとおり維持する | 伸びた分だけ年1〜2回刈る | 下広がりの角度を維持して刈る | 年1回の樹種は6〜7月、年2回は5〜6月と9〜10月 | 毎回同じ深さで刈り続け、内側を葉のない木質部だけにすること |
この表でいちばん重要なのは、芯を止めるのが3年目だという順序です。1年目や2年目に芯を切ると、天端から枝が何本も立ち上がって平らにならず、そのあとの数年を芯の選び直しに使うことになります。逆に芯を止めずに放っておくと高さだけ伸びて内側が空きます。芯を止めるときは目標の高さより2〜3cm上で切ります。切った位置から新梢が伸びて、その分だけ高くなるためです。側面は必ず下が広く上が狭い台形に刈ります。垂直に刈ると下の葉に光が当たらず、足元からはげていきます。
| 失敗 | 症状 | 原因 | 回復手順 | 回復にかかる年数 | 回復が難しい目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 芯を切って頭が複数になった | 天端から枝が何本も立ち上がり、面が平らにならない | 目標高さに達する前に芯(主幹)を切った | いちばん太くてまっすぐな枝を1本だけ残して他は元から抜き、残した枝を新しい芯として支柱に誘引する | 2〜3年 | 芯にできるまっすぐな枝が1本も残っていない場合 |
| 天端だけ刈って側面を放置した | 上は平らだが側面と内側に葉がなく、すかすと向こうが見える | 刈り込みが天端の一面だけになっている | 側面を年2回刈って外側に芽を出させる。内側に葉が残っている位置までは刈り込まない | 2〜4年 | 内側が完全に木質化して芽が1つも出ていない場合 |
| 下枝枯れで足元がはげた | 腰から下がはげて地面が見える | 側面を垂直か上広がりに刈ったため、下枝に光が当たらない | 天端を目標より10〜20cm低くして光を入れ、側面を下広がりに切り替えて芽吹きを待つ | 2〜3年 | 足元の幹が完全に木質化して苔や地衣が付いている場合 |
| 断面が上広がりで下が狭い | 雪や風で枝が開き、下のほうが痩せて見える | 刈り込みの角度が垂直か上広がりになっている | 刈るたびに下を広く上を狭くして台形の断面へ少しずつ切り替える。1年で直そうと深く刈らない | 1〜2年 | なし。角度の切り替えでほぼ回復する |
| 伸びすぎて古枝まで刈り込んだ | 刈った面に茶色い木質部が広がり、芽吹かない | 数年放置したあと、葉のない古い枝の位置まで一度に刈った | 葉が残っている位置までしか刈らず、2〜3年かけて少しずつ詰める | 3〜5年 | マキやカイヅカイブキなど針葉樹で、葉のある位置が天端しか残っていない場合は植え替え |
回復にかかる年数は、刈り込んだ深さと樹種で決まります。葉が残っている位置までで止めれば木は芽吹きますが、葉のない古い木質部まで刈ると、そこから新梢が出ない樹種があります。マキやカイヅカイブキなどの針葉樹は特に芽吹きが悪く、一度深く刈り込むと戻らないことがあります。マサキやカナメモチなどの広葉樹は芽吹きが強いため、同じ失敗をしても2〜3年で回復します。伸びすぎた生垣を一度に目標の高さまで戻そうとせず、2〜3年かけて年ごとに10〜20cmずつ詰めるのが確実です。自分で戻せないときは業者に仕立て直しを頼みますが、頼み方ひとつで料金も仕上がりも変わります。
- 刈り込みではなく仕立て直しとして頼む
仕立て直しは、刈り込み機で面を揃える刈り込みとは別の作業です。芯を選ぶ・頭を整理する・内側の不要枝を元から抜くという手の作業が入るため、見積もりを頼むときは「刈り込み」ではなく「仕立て直し」と伝えてください。作業の種類が違うと単価の決まり方も違います。庭木を1本ずつ透かす剪定の料金体系は剪定料金計算機で見られます。
- 長さではなく本数で見積もってもらうこともある
仕立て直しは1本ずつ手を入れるため、円/mではなく円/本で出す業者があります。単位が違う見積もりを並べると高い安いを判断できないので、長さと本数の両方を出して同じ単位に引き直してください。円/mの刈り込み料金の相場は生垣剪定料金計算機で出せます。
- 何年かけて戻すかを先に決める
1年で戻そうとすると深く刈ることになり、芽吹かない位置まで切ってしまう危険があります。2〜3年かける前提で、年に何回・どの程度刈るかを業者と決めておくと、毎回の作業が軽く済みます。年2回に分けるなら5〜6月と9〜10月が標準的な時期です。
- 植え替えと比べて判断する
内側が完全に木質化して芽が1つも出ていない場合、針葉樹で葉のある位置が天端しか残っていない場合は、仕立て直しより植え替えのほうが安くなることがあります。仕立て直しに3〜5年かける費用と、苗木を買い直して植え付ける費用を比べてください。植え替えの費用は苗木の本数と規格で決まるため、同じ本数・同じ樹高の条件に揃えないと差が分かりません。
生垣は植えるときの手順より、植えてからの年次の順序で仕上がりが決まります。1年目は刈らない、2年目は枝数を増やす、3年目に芯を止める。この3年を守れば、そのあとは伸びた分を年1〜2回刈るだけで形が保てます。守れずに崩れてしまった場合も、葉のある位置までで止めて2〜3年かければ多くは戻ります。戻せないのは針葉樹を古枝まで刈り込んだ場合だけで、そのときは仕立て直しに3〜5年かける費用と植え替えの費用を比べて判断します。年次の手順を全部決めているのは、最初に決めた仕上がり高さと株間です。崩れ方が大きい場合は、刈り直す年数を重ねるより表Aの樹種選びからやり直すほうが早く終わることもあります。