「天然芝は8〜10年で人工芝と同じ金額になる」という説明をよく見かけますが、その内訳が書かれていることはほとんどありません。初期費用はいくらで、年間維持費がいくらで、何年目に張替が入って、その張替にいくらかかるのか。この4つを分けないと、逆転が誰にでも起きるのか、管理を業者に任せた人だけに起きるのかが分かりません。ここでは10年という期間に絞り、費用を動かす項目を率(円/㎡・年)に分解して、逆転が起きる分岐点を求めます。累計額そのものは天然芝・人工芝比較計算機が面積と年数から出すので、このページでは分岐点の読み方だけを示します。
10年間の累計費用は、次の4つの項目の合計で決まります。①初期費用の㎡単価×面積、②面積によらずかかる一式費用、③年間維持費(円/㎡・年)×面積×年数、④人工芝の張替費用(円/㎡)×張替回数×面積です。天然芝には④がなく、人工芝は③がほぼゼロになります。つまり両者は「初期費用が高いほうを、維持費と張替が取り返せるか」という構図で、取り返せるかどうかは年数と管理のしかた次第です。
| 項目 | 天然芝 | 人工芝 | 累計額への効き方 |
|---|---|---|---|
| 初期費用の㎡単価 | 3,900〜4,800円/㎡(標準4,200円) | 7,100〜11,600円/㎡(標準8,600円) | 面積に比例して一度だけかかる。下地整備・施工込みの値 |
| 一式費用 | 13,000円(運搬8,000円+残土処分5,000円) | 5,000円(運搬) | 面積によらず一定。面積が小さいほど1㎡あたりの負担が重くなる |
| 年間維持費 | 300〜1,800円/㎡・年 | 100〜400円/㎡・年 | 面積と年数の双方に比例する。10年では最も大きい項目になる |
| 耐用年数と張替回数 | 張替は既定0回(弱った部分を都度補修) | 6年・8年・10年。張替回数=年数÷耐用年数の切り上げ−1 | 初回の施工は張替に数えないため、10年なら耐用8年で1回、耐用10年で0回 |
| 張替費用 | — | 5,500円/㎡(下地を再利用)〜8,600円/㎡(下地もやり直し) | 張替回数×面積でかかる。1回で初期費用の6〜7割が再び乗る |
この表で幅が一番大きいのは年間維持費です。天然芝は300円/㎡・年から1,800円/㎡・年まで6倍の幅があり、人工芝は100円/㎡・年から400円/㎡・年まで4倍の幅があります。初期費用の㎡単価の差(標準どうしで4,400円/㎡)は一度きりですが、年間維持費の差は10年分積み上がるため、10年という期間では維持費のほうが主役になります。「8〜10年で同額」という説明が人によって当たったり当たらなかったりするのは、この幅を無視しているためです。
そこで、逆転が起きる分岐点を「天然芝の年間維持費が何円/㎡・年になったとき差額がゼロになるか」で求めてみます。面積20㎡・10年・天然芝4,200円/㎡・人工芝8,600円/㎡・人工芝の年間維持費100円/㎡・年という計算機の既定条件では、分岐点は1,050円/㎡・年です。これは自分で刈り込みを行う水準(700円/㎡・年)より上で、芝刈りと施肥を業者に任せる水準(1,800円/㎡・年)より下にあります。
| 管理のしかた | 年間維持費(円/㎡・年) | 10年での結果 |
|---|---|---|
| 肥料と目土だけを購入し、刈り込み・水やりは自分で行う | 300 | 天然芝が安い。分岐点を大きく下回る |
| 刈り込みも自分で行い、肥料・目土・水道代・除草剤を買う(既定) | 700 | 天然芝が安い。分岐点まで350円の余裕がある |
| 刈り込みだけ年に数回、業者に依頼する | 1,050前後 | ほぼ同額。ここが分岐点 |
| 芝刈りと施肥を業者に任せる | 1,800 | 人工芝が安い。初期費用で劣っていた側が逆転する |
| 人工芝を年間管理契約に入れる | 天然芝側ではなく人工芝側が100→400に上がる | 分岐点は下がる。人工芝の維持費もゼロではない |
分岐点は面積によっても少し動きます。一式費用(天然芝13,000円・人工芝5,000円の差8,000円)は面積によらず一定なので、面積が小さいほど天然芝の1㎡あたり負担が重くなり、分岐点は下がります。20㎡で1,050円/㎡・年、10㎡で1,010円/㎡・年、50㎡で1,074円/㎡・年と、実用的な庭の広さでは1,000〜1,100円/㎡・年の範囲に収まります。面積を変えても結論の向きは変わらないので、まず管理のしかたを先に決めるのが順番として正しいです。
分岐点を大きく動かすのは、人工芝の耐用年数と張替単価の組み合わせです。耐用年数を選ぶと張替回数が変わり、張替単価は下地(砕石と防草シート)を再利用できるかどうかで変わります。次の表は、同じ20㎡・10年の条件でこの2つだけを変えたときの分岐点です。
| 人工芝の条件 | 10年間の張替回数 | 張替単価 | 逆転の分岐点(円/㎡・年) |
|---|---|---|---|
| 標準品8,600円/㎡・耐用8年・下地を再利用(既定) | 1回 | 5,500円/㎡ | 1,050 |
| 標準品8,600円/㎡・耐用8年・下地もやり直し | 1回 | 8,600円/㎡ | 1,360 |
| 標準品8,600円/㎡・耐用6年・下地を再利用 | 1回 | 5,500円/㎡ | 1,050(10年では張替回数が耐用8年と同じ) |
| 標準品8,600円/㎡・耐用10年(張替が入らない効果だけを見る) | 0回 | — | 500 |
| 高機能品11,600円/㎡・耐用10年(現実的な組み合わせ) | 0回 | — | 800 |
この表から読めることは3つあります。1つ目は、耐用10年の高機能品を選ぶと張替が丸ごと消えるため、分岐点が800円/㎡・年まで下がり、自分で刈り込みを行う既定の700円/㎡・年にかなり近づくということです。2つ目は、それでも700円/㎡・年なら天然芝が安いことで、初期費用の差(3,000円/㎡)が張替1回分(5,500円/㎡)より小さいため、張替をなくしても初期費用の差は残ります。3つ目は、下地をやり直すと分岐点が1,360円/㎡・年まで上がり、委託水準の1,800円/㎡・年に近づいて逆転しにくくなることです。安い製品を選ぶ判断は、耐用年数が短くなる分だけ張替が増える可能性とセットで見てください。
張替費用の差(5,500円/㎡と8,600円/㎡)は、下地をそのまま使えるかどうかだけで生まれます。人工芝の下地は砕石と防草シートで、芝本体より寿命が長く、通常は撤去する必要がありません。再利用できる場合の張替は、既存芝の撤去処分・本体材料・敷設だけなので、新規施工の6〜7割で済みます。逆に下地が沈んでいる、水はけが悪くなって水たまりが残る、雑草がシートを突き破って広がっている、といった状態では下地からやり直しになり、新規施工と同じ額がかかります。
- 敷設から7年目の状態を見る
張替の判断は年数より状態で決まります。パイルが寝て戻らない、目地が開いて下地が見える、踏むと水が浮く、芝の下の砕石が動いて波打っている、のいずれかがあれば下地まで見直す必要があり、張替単価は新規施工と同じになります。退色だけなら本体の張替で済み、下地は残せます。
- 防草シートを省いていないか確認する
シートを省いた施工は㎡あたり300円安いだけですが、目地と端から雑草が出て、抜くたびにシートと芝の間に隙間ができます。結果として耐用年数より早く張替になり、10年の累計では高くつきます。
- 張替のときだけ面積を増やさない
10年間で庭の使い方が変わり、芝生の範囲を広げたくなることがあります。張替と範囲拡大を同時にやると路盤整備が再び全面にかかるため、張替単価は新規施工の値に近づきます。範囲を変える予定があるなら、最初の施工のときに決めておくほうが安くなります。
金額に幅がある理由は、材料のグレード・現場条件・DIYの比率の3つに分けて考えると整理できます。この計算機では累計額に対して低め-25%・高め+40%の幅を掛けて3通りで出しています。低め側はDIYの比率を上げる、近隣の業者に頼む、繁忙期(春先と秋)を外すことで見込める水準です。高め側は既存芝や雑草の撤去量が多い、重機が入らない、下地の水はけが悪く客土が要るといった条件で上乗せになります。初期費用と年間維持費の双方に同じ率を掛けているため、幅を変えても差額の符号は変わりません。符号が逆転するのは年数・面積・年間維持費・耐用年数・張替単価を動かしたときだけです。
- 1. まず管理のしかたを決める
刈り込みを自分でやるのか業者に任せるのかで、10年の結論は決まります。ここを決めずに金額を比べると、自分に当てはまらない結論を読んでしまいます。
- 2. 年数住み続ける見込みを入れる
5年で比べると人工芝の張替が入らず初期費用の差がそのまま残り、20年で比べると張替が2回入って差が再び開きます。10年という区切りは耐用年数6〜10年の中央にあたるため、最も判断しやすい期間です。
- 3. 分岐点より上か下かで選ぶ
自分の年間維持費の見込みが分岐点より上なら人工芝、下なら天然芝が10年で安くなります。分岐点は上の表から読み取るか、計算機の天然芝の年間維持費の欄に表の値を入れて差額がゼロになることを確認してください。
- 4. 費用以外の差も同じ重さで見る
夏の表面温度、踏み心地、冬場の枯れ色、見た目の経年変化は金額に出ません。日当たりの良い南面で素足を使う庭なら、10年の費用差より夏の温度が判断を決めることがあります。
このページで使った㎡単価・一式費用・年間維持費・耐用年数・張替単価は、すべて天然芝・人工芝比較計算機の入力欄の既定値で、初期費用の内訳は施工単価データに一覧しています。分岐点の金額は、それらの既定値から算出した当サイトの計算結果で、業者の実勢価格や管理の実態で変わります。初期費用の内訳を項目ごとに詰めたいときは芝生施工費用計算機と人工芝費用計算機、天然芝の管理を業者に任せる場合の年間の費用は草刈り料金計算機を使ってください。計算の考え方と免責事項についてはこのサイトについてをご覧ください。